お金の決済には色んな方法があります。現金、クレジットカード、デビットカード、最近では電子マネーやQRコード決済などもあります。手軽で便利で素早く決済できるこれらのサービスとは対照的に、小切手や約束手形という手間暇のかかる昔ながらの決済方法があります。

 

 

小切手や約束手形は個人間ではそれほど利用することはありませんが、主に企業間同士での取引で活用される決済方法です。その約束手形が経済産業省が2026(令和8)年に廃止の方針を打ち出しました。

 

 

 

 

約束手形がなぜ廃止されることになったのか?そもそも約束手形って何?簿記の仕訳用語として勉強された方も多いでしょうが、実際には取り扱った人は少ないでしょうし、一般の人はほぼ無関係の証書です。約束手形の仕組みから廃止に至る原因などなるべく分かりやすく説明していきたいと思います。

 

 

約束手形ってどんなもの?

 

 

日々の買い物では、品物と引き換えにお金を支払います。ところが企業間では品物や金額が大きいので、すぐには現金を用意することができないことから小切手か約束手形がお金の代わりに使われることが多いのです。

 

 

正面真ん中上部に約束手形と記載されていますが、小切手と見た目がそっくりです。しかし性質は大きく異なり、小切手は受け取ったタイミングからすぐに現金化できます。対して約束手形は手形の振出人(支払人)が、代金の受取人に対して、〇月〇日といったように所定の期日に決められた金額の支払いを約束するものです。

 

約束手形を振り出すには金融機関に当座預金を開設します。『当座預金』とは小切手や約束手形の入金や引き落とし業務を金融機関に代行してもらうための専用預金口座です。当座預金を開設するにあたって金融機関と『当座勘定契約』を結ぶ必要がありますが、信用がなければ契約ができません。そのため約束手形を発行するためには金融機関との取引を頻繁に行うなどの信用関係を築かなければならないのです。

 

 

約束手形は手元の現金が少ない場合でも、支払期日まで余裕を持ってお金の準備ができるという特徴があります。通常は1ヶ月から120日以内(もしくは4ヶ月以内)のものが多く、30日、60日、90日、120日と1ヶ月単位を目安にすることが一般的です。

 

 

約束手形のメリットは、約束手形を振り出した側が支払いを先延ばしできる点です。 約束手形による決済は、将来的な現金の支払いを約束する形で行われます。 支払い額は指定した期日までに当座預金口座へ用意すれば良いので、決済時点では手元に現金がない場合でも取引を行うことが可能となります。

 

 

約束手形を受け取った場合は、基本的に支払期日まで待ってから現金を受け取ることになります。しかしその間に会社の資金繰りが悪化し、「すぐにでも現金化したい」と感じる経営者もいるでしょう。そのような方にとって便利な金融商品が、銀行や手形割引業者が提供している「手形割引」です。手形割引は、支払期日の前に 約束手形を現金化できる 商品なので、手形割引を利用すれば都合が良いタイミングで現金を調達できます。ただし利用することで割引料が発生し、通常よりもコストがかかります。

 

 

倒産に追い込まれることも!?気をつけておきたいポイント

 

 

約束手形のメリットは先述したように、定められた期日までに決められた金額の支払いを約束するものです。しかしもし、期日までにお金を用意できなかったら?会社経営するものとすれば絶対に避けたいところですが、用意できないとなれば大変です!

 

 

その期日に、振出人(手形を作成した側)の当座預金の残高が不足していて、支払えない状態が「不渡り」です。こうなると振出人の金融機関からの信用はガタッと落ちてしまいます。

 

 

さらに、1回目の不渡りから6ヶ月以内に2回目の不渡りを出してしまうと、金融機関から「取引停止報告」が出て、事実上倒産に追い込まれます。ですから約束手形の振り出しをする際には慎重に、計画的な資金繰りを見越した会社運営が求められるのです。

 

 

資金繰りできなくて倒産待ったなし、そんな状況を打開する方法もあります。支払先にお願いをして期日を延長してもらう手形のジャンプ です。手形の所持人に手形を返却してもらい、延期した後の支払期日、また支払期日延長分の金利相当額等を上乗せした金額を記載した新たな手形を振り出したり、既存の手形に書かれている支払期日を訂正することも可能です。

 

スポンサーリンク

 

ただし、手形のジャンプを行うと取引銀行や受取人から資金繰りが厳しいと思われて、以後の信用にかかわります。また受取人の了承が得られなければいけません。究極の倒産回避策なのでなるべくなら使用は避けた方が良いでしょう。

 

 

万が一その手形が不渡りの状態になると、振出人に対して手形訴訟を起こすなどの手間が生じます。持ち込み先によって借入条件が大きく異なる点も、手形割引では注意しなければなりません。

 

約束手形廃止後はどうなる!?

 

 

以上、約束手形の大まかな特徴に述べてきましたが、2026年に廃止となる方針が出たので以後は使用できなくなります。約束手形廃止の理由は手形の交換高の減少と言われています。

 

 

2020年の約束手形の交換高は134兆2,534億円(前年比27.0%減)で、ピークだった1990年(4,797兆2,906億円)のわずか3%(97.2%減)にまで減少しています。

 

 

加えて約束手形は現金に比べて支払の猶予期間が約2倍の長さになっており、取引先の資金繰りにおける負担になっているのです。また、支払いの猶予期間における利息などが支払われないことで約束手形の受取人には何らメリットがないので「弊害の伴う支払手段」と揶揄されているのです。

 

 

また約束手形を取り扱う収入印紙などの事務負担も大きく圧し掛かります。世界は電子化してインターネット上で取引する「電子記録債権」が主流となっているので、早くて便利で負担のかからない決済手段に取って替わることになると思われます。

 

 

とは言え、手元にまとまった資金がないときの資金繰りには便利な決済手段ですので、体力の無い資金繰りが厳しい会社には少なからず影響が出てくるものと思われます。色々問題のあるシステムですが、これまでの日本経済を発展させ牽引してきた決済システムであったことは間違いありません。

 

最後までご覧いただきありがとうございました。よろしければ↓クリックお願いしますm(_ _)m


雑学・豆知識ランキング
投稿者

yuuponshow

こんにちは、このサイト編集者のyuuponshowと申します。私たちが生まれてから死ぬまで決して欠かすことのできない「お金」。人間が生きる上でとても大切なものですからお金に執着する人って凄く多いと思います。このブログはお金を稼がせるといった怪しい情報商材などの勧誘ではなく、あらゆる角度からお金について探求するものです。難しい話でならないよう分かりやすく、たまにマニアックな話題も混ぜながらみんなの大好きなお金を語っていきたいと思いますのでどうぞよろしくお願いします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です