日本社会なかなか景気が良くなりませんね。雇用は改善したとは言いますが、戦後生まれの団塊の世代が大量退職し、生産年齢人口(15~64才)が減少したことで雇用改善したように見えるだけですから。実態を見ると賃金は上がらないし、物は安くしないと買ってくれないし、企業はコストカットを強いられて体力が削がれていくばかりです。
この負のスパイラルに陥ってしまった一因として挙げられるのが消費税です。1989(平成元)年4月1日に消費税も導入されて30年以上になりますが、以降景気が上向いたことはありません。すべての物に税金が課せられるというこれまでの日本にはなかった税制ですので世間から大反発を買い、導入直後の国政選挙で、政権与党の自民党は大敗を喫することになりました。
しかし消費税は見直されることなく定着していき、当初の税率3%も段階的に引き上げられ5、8、10と上がっていきます。更に税率を引き上げることも検討しているそうですから景気回復など到底無理な話です。
景気の足を引っ張る元凶として導入時も現在も嫌われている消費税ですが、この消費税の前には物品税という税制がありました。すべての物に税金をかけられるものではなく一部の付加価値のある商品に税を課すものです。どのような商品にかけられていたのか?その税率は?目的は?物品税とはどのような税制だったのかを検証してみたいと思います。
特定商品から税金を取る付加価値税の役割
物品税が導入されたのは太平洋戦争前の1940(昭和15年)の物品税法によって導入されました。消費者に直接課税する直接消費税とは異なり、物品税は商品の出荷時に課税されるため価格に上乗せされる形で販売されていました。そのため消費者は税金がかけられている認識が薄かったのではないかと思われます。
こちらが物品税にかかっていた代表的な商品と税率です。
高価な電化製品や貴金属は分かりますが、大衆的商品であるコーヒーやココアといった商品にも税金を課しているところが分かりにくいですが、物品税導入当初はこれらの商品も贅沢品として扱われていたのです。上記の例にはありませんが、マンガで物品税について取り上げられることもありました。
こち亀の34巻(1985年)で、両さんが物品税について話してるコマがあった。
— K氏 (@810_iiotoko) August 16, 2019
消費税施行前は、子供の知的玩具は『教材』にカテゴリーされて無課税だったけど、今年の10月からは白物家電並の物品税が、全ての教材に課税される模様。 pic.twitter.com/twJdZZqgDp
これらの商品は廃止まで税が課せられることになります。先述したように税は出荷時の価格に内包されているので分かりづらいですが、同じような商品に物品税がかかるかかからないかで、価格の違いが鮮明になります。それでも高所得者が購入する贅沢品には高い税率を課している一方で、低所得者でも購入せざるをえない食料品等生活必需品は非課税になっている税制なので、うまく浸透していたと言えるでしょう。
物品税の問題点
高級品には税率が高く、大衆品は抑えてバランスのとれた物品税ですが、色々と問題がありました。それは課税、非課税のグレーゾーンが曖昧なこと。また新商品が出るごとにごとに審査して指定するというやり方です。そのため新商品が出ても審査に間に合わず当面無税になることもありました。高度成長期に続々と新製品が出てきましたが、販売当初は無税のものが珍しくなかったのです。
グレーゾーンに関して例えば流曲のレコードは課税ですが、童謡レコードは「児童教育用」とされ無税になります。450万枚の大ヒットとなった「およげたいやきくん」は児童教育用として無税となりました。
「物品税」があった頃のお話https://t.co/1sARIiebJI pic.twitter.com/uJEPhKAFA6
— うないいちどう (@EinsWappa) April 26, 2019
たいやきくんと類似するヒット曲として皆川おさむの「黒ネコのたんご」、わらべの「めだかの兄妹」が挙げられますが、これらは流行唄として課税されています。その理由が非常に分かりづらくカップリングの曲が長いとか歌詞の内容だったりとか分別しづらいことから不公平感が生じることになりました。
物品税から消費税へ
商品によって課税非課税の線引きが非常に分かりづらい税制であったことから、将来に向けて物品税に替わる新税を制定することになりました。1987年2月に売上税の導入を柱とした関連法案を国会提出されました。これは今の消費税と同じ生活必需品などすべての商品に5%の間接税を課せるものです。しかしマスコミで大々的にネガティブキャンペーンを展開されたことで国民が強く反発し、売上税法案は同年5月に廃案となりました。
これで大型間接税の導入は消滅したかと思いきや、小売業者、卸売業者、製造業者、果ては消費者まで、広く多段階にわたって課税を行っていく消費税導入を推進、これも当然反発あるかと思いきや、昭和63年に国会であっさり消費税法案が可決されることになったのでした。
可決された要因としては先述した売上税が小売業者だけを標的にした税制であることで不公平であることから流通すべてにわたる過程で税制を課す消費税であれば公平であるということで痛みを分かち合えるようになります。
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そして少子高齢化問題等で国の収入が減少する中で増加していく社会保障費の負担を国民全世代にかけることで、現役世代への負担を集中させずに済むし、特に国民の生活水準も上昇し贅沢品に手が届く消費者が増加してきたため時代に合わなくなり、間接税の仕組みを変えていく必要性から消費税が適しているという主張で自民党が強引に推し進める形で可決させていくのでした。
こうして平成元年4月に導入された消費税、大型間接税導入を推進してきた自民党政権の悲願が叶った訳ですが、国民の反発は高まるばかりで、導入した竹下内閣は直後に退陣に追いやられ、直後の参院選では大惨敗と消費税導入と引き換えに議席を失うことになりました。
しかし消費税導入で安くなった商品はたくさんあります。例えば車など購入したら20%以上税金がかかっていたものが3%になり、消費税導入を待って新規購入や買い替えCDは500円ほど安くなりました。そうした商品購入層にとっては恩恵があったと言えるでしょう。
高所得者に負担が軽く、低所得者に大きな負担が重くなる消費税では公平性を欠きますし、景気低迷に繋がります。「失われた30年」と言われるほど日本経済の低迷に導いたと言われる消費税。一億総中流社会の原動力になり、日本が経済成長した昭和の頃の物品税に戻すべきとの声もあります。廃止になって33年になりますが、物品税を知る世代の人はそう思うでしょう。
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