昨年延期が表明された東京オリンピック・パラリンピックが今年の7月開幕致します。コロナが収束していない中で果たして開催されるのか?という不安はありますが、無事開催された暁には選手の皆さんには、持てる力を存分に発揮していただき、我々に最高のパフォーマンスを見せて貰いたいですね。
毎回オリンピックに数多くの選手を派遣している日本ですが、その中でも自衛隊体育学校はこれまで五輪に送り込んだ選手総数は225名、計20個のメダルを獲得するなど実績があり、世界に通用する有能なアスリートの養成機関として知れ渡っています。
スポーツ競技の選手紹介の肩書でよく目にする自衛隊体育学校。自衛隊の部隊であることは分かるのですが、そこに所属する彼ら彼女らの待遇は?収入は?色々探りたくなるアスリート育成部隊を検証してみたいと思います。
自衛隊体育学校とは?
自衛隊体育学校は1961(昭和36)年8月、「部隊等における体育指導者の育成」、「オリンピック等国際級選手の育成」、「体育に関する調査研究」という3つの使命を掲げ陸海空自衛隊の共同機関として設立されました。体育学校施設は埼玉県の陸上自衛隊朝霞駐屯地内にあります。時期からして前回の東京オリンピックを意識して設立されたとも言えるでしょう。
自衛隊体育学校所属の選手は特別体育課程学生となり、自衛官の身分となります。学生と肩書がありますが、採用時に大学卒業者には2等(陸・海・空)曹、大学院修了者には1曹、それ以外で20歳以上の者には3曹の階級が指定されます。スポーツエリートは自衛官としての身分も優遇されるということです。
自衛隊体育学校での生活は、主にアスリート競技の練習漬けになります。一般企業の社会人アスリートだと、競技をこなしながら企業の業務を行いますが、体育学校は部隊訓練を行う必要はありません。 競技にすべての時間をかけることができるのです。それに試合の用具ウェア、世界で開催される試合の遠征費用も出してくれるのですから大変恵まれています。完璧なサポート態勢を誇る最高のトレーニング環境のもと、己を磨き続けることができるのです。
現在、特別体育課程に編成されている競技(種目)は以下の通りです。
レスリング、ボクシング、柔道、射撃(ライフル競技、ピストル競技)、アーチェリー、ウエイトリフティング、陸上(マラソン、競歩)、競泳、近代五種、カヌー(スプリント競技)、ラグビー(女子)
さらに冬季種目として、バイアスロン、クロスカントリースキーの合計13種目です。
所属監督・コーチは各競技連盟・協会の強化委員、ナショナルチームコーチを兼任しており、全日本レベルの指導を受け、最新の情報を得ながらより高いレベルのアスリートを目指すことができるのです。
自衛隊体育学校に入るための条件
自衛隊体育学校は大学・高等学校のスポーツ競技大会で優秀な成績を収めた者の中から、主にスカウトによって採用されるのが一般的です。その基準は非常に高く、オリンピック候補になり得ることが挙げられます。
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または自衛隊の体育学校にて、体育特殊技能者として合格になった人、もしくは一般曹候補生・自衛官候補生として採用されたうえで2度の選考試験に合格することです。こちらはスカウト枠と違って選考されるまでが非常に難関で、厳しい訓練も受けなければなりません。しかしこのルートでアスリートとして開花し、オリンピックや世界大会に進出する選手をたくさん輩出しています。
ということで、学校から直接自衛隊体育学校へ進学する手段はありません。選ばれしアスリートだけに与えられるスポーツエリート特別養成コースなのです。
五輪や世界大会で実績を挙げることができるのも自衛隊の強力なバックアップがあってこそと言えるでしょうね。
アスリート引退後はどうなるの?
非常に恵まれた環境でアスリートとしての技量を向上できる環境であることはご理解いただけたかと思います。しかしこれだけの待遇を得られる反面、シビアな実情もあります。体育学校所属の選手としての実績を求められるので、実績が伴わなければ一年ごとに評価されます。評価が伴わなければ退校して一般の自衛官に戻るか、自衛隊を退官しなければなりません。
1964年の東京、そして次のメキシコ五輪重量挙げにおいて二大会連続金メダルを獲得した三宅義信さんは選手引退後も自衛隊に残り、そのまま重量挙げ指導者となり、階級は幹部クラスに出世し、最終的には自衛隊体育学校校長で自衛官の任務を終えています。三宅選手のような実績者はその後の自衛隊での待遇は非常に恵まれていると言えます。
しかし思うほど実績を挙げられなかった選手は厳しい選択を迫られます。スカウトで入った選手は部隊の経験はないですから、一応幹部候補生としての階級は残るもののそれまで舞台経験は皆無です。一から部隊としての訓練を行い、出世していかなければなりませんので非常に大変です。そのためアスリート引退後は退官する選手は少なからずいます。
自衛隊で定年を迎えるまでの生涯収入は2億円超と言われています。年金など社会保障や福利厚生も手厚く、衣食住も完備される国家公務員という恵まれた立場です。しかしアスリートとして築かれた体力があってしても、厳しい自衛隊での生活に溶け込めずに去っていく選手も多いことも事実なのです。
自衛隊体育学校の選手は最終的にはアスリートとしての実績がモノを言うことになる厳しい世界です。スポーツエリートの中でも優劣が付けられ、選手としての引退後にも差がでてくる厳しい世界です。しかし恵まれた施設や環境での練習が行え、且つ費用面の心配もないというのは競技者からすれば羨ましい限りです。一方で体育学校所属選手として生き残るために世界の舞台で活躍しなければならないという必死さ、モチベーションがあればこそ世界で名を馳せる多くのアスリートを輩出する要因となっているのでしょうね。
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