私たちが収める税金は原則として貨幣で納めることになりますが、江戸時代まではお米で税金代わりに納めていました。いわゆる「年貢」のことです。社会の授業で習ったので皆さんご存じだと思われますが、今の世の常識からして何でお米がお金の代わりになれるのか理解し難いのではないでしょうか。そんな年貢について検証していきたいと思います。
年貢制度のはじまり
ごはんを主食として米と食生活が密接につながっている日本では、米が租税の1つの形である年貢になり、その形が長い間続きました。古くは7世紀末の飛鳥時代からで、この時、税が全国統一的な制度として歴史に現れるのは、701年の大宝律令、班田収授の法と租・庸・調の制度からです。
大宝律令が制定されることにより日本人すべて戸籍が登録されることとなり、班田収授の法で、田を班(わか)って口分田として人民に分け与えました。(売買は禁止で、本人が死亡すると国に返納されます) 分け与えられる田の大きさは、6 歳以上の男子で 2 反(約 23 アール)、女子はその 3 分の 2 でした。また身分によって与える田んぼの大きさに違いが生じていたそうです。
口分田をただで受け取れる代わりに人民には「年貢」という制度により米の収穫のおよそ3%を納めなければなりません。田んぼをただで貰える代わりにしっかり見返りも求めるという、国の直轄により人民を使って上前を撥ねるというよくできた制度でした。
貨幣より優位性を持っていたお米
この年貢制度がスタートした頃に、日本初の通貨である和同開珎(わどうかいほう)が発行されました。しかし当時は米や魚といった物々交換が基本でしたから、金属でできたお金は馴染めないものでした。それでも役人の給料や物の売買に貨幣を使うことが義務づけたのですが、結局使われていたのは一部の都市部のみで、なかなか普及しませんでした。
それでも貨幣の流通を定着させようと和同開珎は鋳造され続けますが、人々からの信頼はなかなか得られないばかりか、次第に原料となる銅が不足してしまい、質はどんどん悪くなっていきました。ますます人々からの信頼が無くなり使われなくなっていきます。
そして958年に銅銭が発行されたのを最後に、日本では公的な貨幣を作るのを止めてしまうことになります。その後、本格的な貨幣づくりが始まるまでには、戦国時代を経て豊臣秀吉の時代になるのを待たなくてはなりませんでした。
当時の貨幣とお米の価値の高さは比べるまでもなくお米の方が高くなることはおのずと想像できると思います。お米に限らず生活必需品の布・塩の方が貨幣よりも信用があり、貨幣など信用に値できない代物だったのです。
価値として常に上位にあったお米は年貢として長年税金としての役割を果たしてきましたが、その価値が逆転することになるのは江戸時代後期になってからでした。
信用経済としての役割を終えたお米
年貢米は食糧の役割だけではなく、城や陣屋の建築費・維持費、領地の連絡費、災害復旧費などの役割を果たします。このため年貢米の依存度が年々高くなり、戦国時代に豊臣秀吉が日本全国でおこなった大規模な土地に関する調査太閤検地により年貢の割合が格段に増えることになりました。
江戸時代に入ると年貢徴収はその年の収穫量を見込んで毎年ごとに年貢率を決定する検見法(けみほう)を採用していましたが、年によって収入が大きく変動するリスクを負っていたことから、8代目将軍・徳川吉宗が享保の改革で打ち出した豊作・不作にかかわらず一定の年貢率による定免法(じょうめんほう)が採られるようになりました。
これにより江戸幕府の財政は飛躍的に潤うことになりましたが、定免法は豊凶を考慮しないため、百姓の暮らしや生産活動が大きく損なわれてしまうことになります。おまけに米が増産されたことで米の価格が大幅に下落したことから、米を売って商売にする農民の暮らしが困窮することとなり全国各地で農民による打ちこわしや一揆が相次ぐことになりました。
一揆の続出と価値下落、また農業が進歩して米以外にも価値のある作物が増えたこともあり、お米の相対価値が下がることになり信用経済としての価値が失われつつありました。そして貨幣の鋳造技術が進歩し、流通量も増えたことで、江戸時代後期になると手軽に持ち運びでき保管もしやすい貨幣が価値の基準といて定着していくこととなったのです。
スポンサーリンク
明治時代になると地租改正によりお米を税金として納める年貢制度は廃止され、貨幣による納税が一般的になります。こうしてお米の信用経済としての役割は終わりを迎えるのです。
現在よりは物がなくお金の価値が当てにならない時代だからこそ、お米は古くから貴重な食糧として経済価値を見出せる国の財源として重宝されていたのです。それから時代が移り今ではブランド米など品質の向上によって世界中から評価されるようになりお米の価値観を高めた我が国日本は今後もお米の国として認識されていくことでしょう。
最後までご覧いただきありがとうございました。よろしければ↓クリックお願いしますm(_ _)m
雑学・豆知識ランキング