7月8日にサンマの流し網が解禁されましたが、今年は例年に比べて水揚げが極端に少なく15日によくやく初水揚げされたものの水揚げされたサンマは僅か197匹でした。初セリでの最高値は1キロ41,040円という過去最高の高値で取引され、店頭小売価格は、な・何と一匹5980円という値で取引されました。秋の味覚として食されたサンマが超高級魚となり、一般庶民の手には届かない食材となってしまうことになりそうです。
なぜサンマが獲れなくなったのか?
サンマを運ぶ親潮が例年ならば北海道沿岸まで南下していたのですが、近年は千島列島付近までしか届かないことが原因のようです。これだけの漁獲量の落ち込みは過去にも例がなく、昨年(2019年)の漁獲量は調査開始以来最も悪かった1969年(昭和44年)も下回る水準でした。今年は昨年のワースト記録を塗り替える可能性が高まりました。
漁獲量大減少の原因は他にもあり諸外国でのサンマの水揚げ量が年々増えてきていることも挙げられます。つまりサンマの食文化が世界に広がってきているのですね。世界的観点から見て漁獲量に大きな変化はないようです。
つまり日本の漁場でサンマが獲れなくなっているだけなのです。先述したように親潮の影響が歴史的不漁となっているのでこれが改善されれば元のような漁獲量に回復すると思います。
サンマの代替品にイワシ
しかし自然に任せると漁獲量がいつ回復するのか分からないのは辛いところですね。でもサンマが食べられなくてもイワシがあるじゃないですか!!正直言って私、サンマもイワシも同じものという認識ですのでサンマが手に入らなければイワシで良いじゃない?的な発想です。刺身でも焼いても食感も味もほぼ同じですからね。
しかしサンマとイワシは生態がまるっきり違う魚です。こうして並べると見た目の違いが明らかになります。
イワシはニシン目(もく)ニシン科に属する魚類です。ニシン科にはほかにウルメイワシ、ニシン、コノシロ(寿司種の『シンコ』などに使われる)などが含まれます。食べて美味しい魚が多いです。見た目は本当に普通ですね。
一方サンマはダツ目サンマ科に属しています。サンマ科にはほかに身近な魚種はありません。ダツ目はサンマのほかにダツ、サヨリ、メダカ、トビウオなどが含まれます。体系はすらっと細長い刀のような体つき、下のあごだけが飛び出ていてイワシと比べてもまるっきり違いますね。
壊滅的なサンマと比べてイワシは日本近海での水揚げは良好です。年間を通じてとれるし、夏から秋が最も脂が乗って最もおいしい時期。昨年は主産地の北海道で前年の3~4倍とれているそうです。三陸沖や日本海側でも好漁です。サンマがダメならイワシで秋の味覚は決まりですね。
養殖サンマの開発について
現在店頭に並ぶサンマはすべて天然ものです。実はサンマやイワシはこれまで養殖されませんでした。それは何故か?
サンマやイワシは値段が安い魚なので投資に見合わないから養殖されないのです!
そりゃそうですよね。安い魚に金掛けて養殖しても意味ないですから。ですが先述したようにサンマの水揚げがこの有様では養殖という手段も検討した方が良いと思われます。
しかしサンマの養殖はとても難しく、実現には至っていません。生態がはっきりしておらず、鱗が剥がれただけで死んでしまうデリケートな魚で寿命は二年です。他の魚と比べても平均寿命が短いこともあり育成の難しさ経済的な問題から養殖には適さないとされています。
しかしサンマの養殖はすでに行われており、福島県にある環境水族館「アクアマリンふくしま」というところで行われています。ここは日本でサンマの生体展示をしている数少ない場所です。いわゆる展示物としての養殖サンマですが、養殖技術が進めば市場に出回ることもあり得ると思います。そうなれば世界に広がるサンマ市場へ養殖技術を売り込める日本のビジネスチャンスになるでしょう。
ということで記録的不漁によって一匹6,000円もの高値となってしまったサンマについて取り上げました。消費者の立場としては代替品とか養殖とか勝手なこと書きましたが、サンマ漁師として代替などと気軽に言える立場にはない職業の方もおられますからやはり日本近海で漁獲量が戻ることが望ましいと言えるでしょう。やっぱ何だかんだ言って天然もののサンマ旨いですもんね。食卓から消えてしまうのは大変忍びないです。