今年は新型コロナ・ウィルスの影響で大学がキャンパスを閉じてしまい授業を受けることのできない学生が殆どです。せっかく厳しい受験戦争を乗り越えて入学したのに勉強できないもどかしさ、休学中でも学費はかかるのに、このご時世だからアルバイトもままならない、頼りは親からの援助ですがそれも厳しくなれば大学に籍を置くことができなくなります。現に経済的理由による大学中退者が続出しているそうです。

 

昭和50年と令和元年の大学の学費の比較

 

こうした状況だと、私大に比べて授業料の安い国公立大学の学生ならば何とか乗り切れると思えるのですが、実は国公立に進学できたとしても授業料は決して安くはありません。

 

 

ご覧のように国公立大学へ進学しても初年度で80万円超、2年目以降、卒業まで毎年50万円超掛かる訳です。勿論私大よりは安く済むのですが、親の負担を考えると結構厳しいものがあります。経済的負担のかからない国公立大学というイメージがありますが、実際はそうではなかったのです。

 

しかしかつての国公立大学は家庭の負担を考える必要はありませんでした。現に昭和50年度の国公立大学は入学金・授業料をご覧ください。

 

 

国立大入学金36,000円、授業料50,000円の計86,000円、公立大は更に安くて入学・授業料合わせて53,000円です。私立は280,000円ですから今と比べてかなり安いですね。もちろん昭和50年と今の物価の違いを考慮しないといけませんから次のステージでそれを検証したいと思います。

 

国家公務員大卒初任給で賄える国公立の授業料

 

 

昭和50年の高卒国家公務員の初任給が66,000円、大卒国家公務員の初任給が77,000~80,000円となっています。現在が高卒で14万円、大卒で17から18万円となっていますから単純に給与基準からして2倍超となる訳です。つまり昭和50年当時は大学初年度にかかる費用が、大卒初任給だけで賄えることが分かります。

 

 

次に消費者物価指数で比較してみましょう。消費者物価指数とは消費者が実際に購入する段階での商品の小売価格(物価)の変動を表す指数です。これで昭和50年当時の大学入学金と授業料が現在に置き換えるとどのくらいになるのかが分かります。

 

 

上のグラフで分かるように消費者物価指数は約2倍の伸びを示しています。授業料も2倍ですから、現在に置き換えると年間約10万円の授業料と計算できます。この学費であれば経済的な理由で大学進学を断念することなく、奨学金に頼らなくても済みますから大変恵まれた時代であると言えますね。ちなみに翌年の昭和51年に入学金・授業料ともに大幅アップしますがこの時代は高度経済成長の影響も続いていて収入は右肩上がりのインフレ状態ですから、学費アップはインフレに合わせたような感じであまり気にはならなったのではないかと思います。

 

 

しかし消費者物価指数はバブル崩壊以降(1990年)を境にほぼ横ばい、つまり30年変わっていないのに大学授業料は国立大学で約15倍,私立大学で約4倍ですからいかに大学授業料が高騰しているかが分かると思います。

 

国立大学法人化と補助金削減で授業料が急騰する

 

 

国公立大学はお金がなくても行ける大学というそれが崩されたのが平成16年(2004年)の大学変革とも言われる国公立大学の独立行政法人化の流れです。これにより、国立大学の授業料がこれまでの全国立大学一律主義から運営の採算性を求められるシステムに変えられることとなりました。

 

 

法人化した理由というのが「法人化すれば自主性が高まり、競争原理が生まれて活性化する」というものでした。海外では日本に先立って国立大の法人化が進んでいて、法人化が国際標準というグローバル路線に日本も乗ったというところです。

 

 

ところが法人化した後毎年1%ずつ運営費交付金が減らされていくことになりました。運営費交付金は減らさない約束だったのにもかかわらずです!!

 

 

この結果、運営費交付金は法人化後に1500億円も減らされることとなりました。この交付金は人件費が入っているので、全国の大学で正規雇用の若手研究者を雇えなくなり、理工系で博士課程に進む数も大きく減りました。そして大学運営費を賄うため大学授業料も上げざるを得なくなるという悪循環が生じてしまったのです。

 

 

運営費交付金が削除され続けた原因として挙げられるのが私立大学の乱立です。1990年代以降の法的規制緩和による大学の新設ラッシュにより、ここ30年で、大学の数は300も増え今や私立だけでも600あるそうです。大学へまわす補助金も増えたことで国公立への分配金も少なくなってしまうことになりました。

 

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大学乱立によって日本の大学への入学希望者総数が入学定員総数を下回る大学全入時代を迎えてしまうこととなりました。そのため私大の40%が定員割れを起こす事態となっており、明らかに規制緩和の弊害と言えます。定員割れになれば補助金も削減されるので補助金目当てに外国人留学生を大量に入学させる私大が増加、その留学生が大量に失踪したことで問題になるなど話題になりましたが、大学の適正な運営管理がなされていればこんなことにはならなかったはず、つまり国の怠慢と言えるのです。

 

 

優秀な学者や研究員を育てるためにももっと大学に資金を投入しなければなりません。お金がなくても行ける大学だったはずの国公立大学の存在意義はそこにあるのではないでしょうか?そのことを踏まえて昔のような安い授業料で通える大学に戻して貰いたいものです。

 

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投稿者

yuuponshow

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