昨年春に新型コロナの世界的感染拡大の影響により2万円を割り込み大きく落ち込んだ日経平均株価でしたが、ここからめきめきと回復し続け、下落前の水準に戻したと思ったらそこから記録的な上昇を続け、遂に今週月曜日に3万円台に乗せました。3万円台に乗せるのは1990(平成2年)8月2日以来30年半ぶりとのことです。
1990年と言えばバルブ経済真っ盛りで、世の中好景気に沸いていた時代ですが、当時と比較すると景況感は大きく異なります。コロナの影響もあり世界的な自粛により企業倒産や廃業が相次ぎ、雇止めにより失業者で溢れる世界的不況真っただ中の今の時代に3万円まで上昇するとはこれまでの常識ではあり得ない事態と言えます。一体何が起きているのでしょうか?
バブル期だった30年前の3万円台時代
以前の3万円台時代は先述したようにバブル景気の頃ですが、初めて3万円を付けたのが1988(昭和63)年12月7日のことです。その前年1987年はブラックマンデーという世界同時株価大暴落に見舞われ、日経平均株価は25,745円から3,836円48銭安(14.90%)の21,910円と過去最大の暴落を起こしました。
世界経済の終焉と言われたこのブラックマンデーから立ち直り、日本はバブル景気に突入します。そして1989(平成元)年12月29日の大納会で日本歴代最高値である38,957円を付け、市場は大熱狂となり最高の形で平成最初の年を締めくくることになります。この当時は取引市場は場立ちと呼ばれる手でサインを送り売買注文を伝える証券マンがいたんですね、時代の流れを感じます。
この上昇気流に経済専門家たちの鼻息も荒く「1990年は5万円」「数年で10万円」と強気な見通しが市場を覆ったのです。
ところが年明けから相場は崩れ、1990年1月だけで日経平均は1,726円92銭も下落しました。最後に3万円をつけた1990年8月2日はイラクがクウェート侵攻した日でもあり、これが翌年初頭の湾岸戦争の引き金となる歴史的な日となります。それから2カ月後の1990年10月1日には一気に2万円割れとなり僅か2カ月で1万円の大急落となりました。平成元年大納会で付けた最高値からするとわずか9か月で2万円近くの落ち込みでバブル経済は崩壊となるのでした。
今回なぜ3万円まで上昇したのか?
3万円に到達する直前に国内GDP速報値が発表しましたが、前年比マイナス4.8%の11年ぶりのマイナス成長となりました。
内閣府が発表した2020年のGDP速報値は、物価変動を除く実質で前年比4.8%減となり、11年ぶりのマイナス成長でした。リーマン・ショック後の09年の5.7%減に次ぎ、1955年の統計開始以降で2番目の悪化幅。新型コロナウイルス感染拡大による経済活動の縮小が響きました。 https://t.co/FuiQHMXOf7
— 東京新聞編集局 (@tokyonewsroom) February 15, 2021
一方で10~12月期の前年比で見ると+3.0%増、年率換算にすると二桁成長の12.7%増でした。
2020年10~12月期の実質GDP速報値は、年率換算で前期比12.7%増と2桁成長となりました。新型コロナ感染拡大で停滞した経済活動が国内外で持ち直し、輸出や個人消費が全体を引っ張りました。ただ、消費マインドは冷え込み、コロナ禍からの本格的回復は依然見通せません。https://t.co/7DmuXOwvz2
— 時事ドットコム(時事通信ニュース) (@jijicom) February 15, 2021
通年では11年ぶりの大きなマイナスだけど、四半期ベースで見ると予想よりも高いことが評価されて、通年よりも四半期のポジティブな結果を市場がチョイスして、リスク要因を無視した形になります。
他の要因としては世界各国で打ち出したコロナ禍による財政支出でばらまいたお金が株式市場に流れていることも挙げられます。経済の下支えのため、各国が大量のお金を供給し、あぶれたお金が株式市場に流れているのです。そのため日本だけではなく、世界各国のマーケットも高値更新中です。日本はコロナ対策以前から日銀による大量の株買いも影響しており、大崩れしないという安心感もあり3万円の大台に到達したと見られます。
いつまで続く?3万円市場
今週月曜日(2月15日)に到達した3万円市場ですが、果たしていつまで続くのでしょうか?30年前はそれなりに景気の良さを実感できましたが、今回は実体経済を伴わないものです。コロナ禍以前と比べても高い水準にある日経平均株価が適正なものではないのは誰でも理解できると思います。いずれ適正に向かうための動き(暴落)が出てくることも予想されます。
しかし日経平均株価は現在ポジティブシンキングに動いているので景気動向にかかわらずこの先もしばらく上昇していくかも知れません。もしかしたら平成元年の歴代最高値超えもあるかも。これまでの常識とはかけ離れた実態に反映していないもなので経済の専門家でも予想しづらいのではないでしょうか。
そしてもう一つ注目しておきたいのが、日本市場に占める外国人投資家の割合が7割も占めていることです。
日本のマーケットは日本で動かしているわけではなく、海外の動きで左右されているということです。 日本経済と乖離する実体が伴わなくなり、マネーゲーム化したと言えるのではないでしょうか。
日本の場合、コロナ以前から景気が悪化しており、消費税増税の影響や非正規雇用の増加による経済の不安定要素が多すぎます。その状況でありながら30年前のバブル期と肩を並べる状況ではないということ推して知るべしです。経済の状況を見極める材料であった日経平均株価がその役割を果たさなくなれば今後の大きな禍根となりそうです。