選抜高校野球が終わり、群馬代表の健大高崎が初優勝しました。高い走塁技術と守備力で勝ち抜いてきたチームで、決して打力のチームではありません。ところで今大会は異常事態と言いますが、ホームランの数が異常に少なかったのです。健大高崎の今大会でのホームラン数は5試合を通じて0。ちなみにベスト4に残ったチームも本塁打0でした。
ご覧のように過去10年を通じてのホームラン数は激減しました。今大会の3本のうち1本がランニングホームランなのでフェンス超えは2本となります。大会を通じて3本とは木製バットを使っていた昭和時代のレベルです。ちなみに長打も激減し、内野安打やポテンヒットが目立ちました。こうなった原因は今大会から採用されることになった新基準の低反発金属バットによるものです。
これまでのホームランなど長打出まくりの打ち勝つ野球が見直されてしまうくらい低反発金属バットの効果を見せつけられる大会となりましたが、なぜこのバットが導入されたのでしょうか?その経緯やバットの分析など色々掘り下げてみたいと思います。
危険な打球速度による事故が発端
高校野球で金属バットが導入されたのが、1974(昭和49)年夏の大会からです。導入のきっかけは1973年に起こった石油ショックで木材が不足し、価格が高騰したことによる経費節減、また資源保護という目的がありました。それまで使用していた木製バットのように折れる心配がなく長く使えるし、へこんだりして使えなくなっても金属のリサイクルにまわすことから経済的にも優れているので高校野球や社会人野球で使用されるようになりました。
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耐久性に優れた金属バットの特徴は、「芯」が広く、飛距離が伸びます。その結果、高校野球はホームランなど長打が出やすくなり打力に勝るチームが有利になることになりました。
甲子園で顔面直撃して救急車に運ばれる事が低反発導入検討前に起った。
— 度ハマり (@dohamari_24) August 15, 2023
顔面の骨折で済んだのはよかったですが、生死に関わる事
ここ数年で投手付近の危ない打球も増える。
投げた球ですら避けるのが難しいのに、より速いスピードで同じ距離を打球が来る。
約10%ほど反発力を落とす事には意味がある https://t.co/51hKMC2JcG
しかし、選手の力量以上の飛距離が出る金属バットは危険な打球速度を生み出します。攻撃型のチームが有利になることは勿論のこと、危険な速度の打球が野手の処理を誤らせ、打撲や骨折といったケガが頻発しました。そのため高校野球では従来の金属バットから、飛ばない仕様の低反発バットを使用することとする新規定を設けたのです。
飛ばない金属バットの秘密
今大会から導入された飛ばない低反発バットですが、新基準の規定はこのようになっています。
【重さ】
・金属バット 900g以上
・低反発バット 900g以上
※バット径が細くなるので、重さ900g以上を満たすために金属の肉厚を厚くしなければならない
【最大経】
・金属バット 67mm
・低反発バット 64mm(木製バットの平均的な太さ)
【打球部の厚さ】
・金属バット 3mm以上
・低反発バット 4mm以上
金属バットの製造工場番号の横に「-R」と記載があるバットが新基準対応です。
金属の材質を変える訳でもなく、数ミリ基準を変えただけで、現基準バットより打球の初速が約3.6%減少、最大飛距離は5~6メートル程度短くなります。僅かの変更だけでボールが飛ばなくなるとは驚きですね。
バット変更でかさむ費用、木製を使用する高校も
実は高野連では、新基準バット導入に合わせて高野連に加盟しているすべての硬式野球部に2本が提供されます。新基準バットに変更することで、バットを総入替しなければならないので、大変助かります。しかし2本だけでは多くの野球部員を抱える学校では練習の時に足りないので、当然各野球部では低反発バットをある程度揃えなければなりません。
従来の金属バットは2万5000円~3万円くらいが相場でしたが、新基準は3万5000円~4万円くらいになります。一チームで20本購入するとなると80万円近くかかることになります。これまでより負担がかさむことになり、野球部関係者としては頭の痛い話ですが、実は今回の大会でこの新基準バットを敢えて使わなかった選手がいました。
10本揃えた木製バット「何本折ってもいい」 15万円の負担も…背中押す親の愛情 #高校野球https://t.co/huZfXsTE3O
— Full-Count フルカウント (@Fullcountc2) March 29, 2024
高校野球では久しく馴染のなかった木製バットを試合で使用する青森山田高校の選手、実は規定により従来の金属バットは使用禁止になりましたが、木製バットは使用することができます。新基準バットでは「900g以上」というルール規定がありますが、木製バットは重さ制限がございません。そして金属で規定されている900g以上という規定もありません。つまり、木製バットであれば850gを使っても良いわけです。
スイングスピードは軽ければ軽いほど速くなります。となりますと、その軽さだけでも木製バットに分がありますし、金額も15000円〜20000円程度で済みます。しかし木製のデメリットは簡単に折れてしまうこと、何度も折っては金属より却って負担がかさみます。そこで練習では新基準を使い、試合で木製を使うという手段です。折れることは仕方ないにしてもその頻度を極力下げることで、木製を活用するということです。苦肉の策ですが、こういう手段で少しでも優位にしたいというチームはこれからも出てくるでしょう。
ということで低反発基準になった高校野球のバットにより、これまでの打ち勝つ野球が見れなくなるのはちょっと残念ですが、一点差を争うスリリングな展開の試合が増えていくのは野球ファンとして却って楽しい展開になるのではないでしょうか?ケガの防止もありますが、将来上のクラスで野球をやる場合、すべて木製バット基準ですから順応するのに良いかも知れません。もしかしたらプロ野球や大学野球でも新基準の金属バット使用が認められるかも?折れないし経済的に考えたらこちらのが良いかもですね。
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