景気の悪化が叫ばれている世の中ですが、今年はそれの追い打ちをかけるように新型コロナ・ウィルスの影響により経済的困窮者が増加しています。お金を稼ぎたいのに雇用先から解雇され、お金を稼ぐことができず生活できない。そうなったらどうしますか?そんな時のために国が提供するあらゆる公助保障が確立されています。
その中でもとりわけ生活保護は生活困窮者のためのセーフティーネットとして憲法でも保障されているセーフティーネットです。
生活保護とは、日本国憲法第25条に記載されている「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」に基づいて制定された公的支援制度です。そんな生活保護について解説と検証をしていきたいと思います。
生活保護を受ける条件
生活保護を受給するための基本条件は下の4つです。
- 家や車、財産といった利用可能な資産を保持していないこと
- なんらかの理由で働けない環境であること
- 国からの公的融資や公的制度を利用していないこと
- 親や兄弟など、家族から援助を受けられない状況であること
上記に当てはまっていて、かつ「世帯収入が最低生活費よりも少ない」場合のみ、生活保護の受給資格が与えられます。
自立した生活を確立できない、病気や障害で働けない、お金を借りることができない、身内からの援助が叶わない、等などの条件に当てはまると生活保護を受給できることになりますが、この条件だとかなり切羽詰まった状況でなければいけません。ただし、これらの条件には頭に原則が付きます。
例えば車を所有しているケースの場合、住んでいる地域が田舎で、車がないと緊急時に対応できない、障害があるため車がないと移動できない、自営業で車がどうしても必要な場合です。車がないと生活できない人のみが対象となるため、生活保護費を貯めて車を買うことはできませんので、新たに車を購入する場合にはローンも利用できないので大きな障害となるでしょうね。
現在持ち家に住んでいる人の場合、住居がなくなるとさらに生活に困窮してしまうため、家に住みながら生活保護を受けられます。申請の段階では家の売却は促されませんが、土地や家に資産価値があると判断された場合、保護決定後の生活状況によっては、家を売却するよう言われることもあります。この点については住宅の築年数とかにもかかわってくるのでケースバイケースとなると考えておいた方が良いです。
働いていても生活保護の支給は可能です。現在働いている人でも、最低生活費より収入が下回っている状態ならば、最低生活費から収入を差し引いた分を生活保護費として受け取れます。
最低生活費が14万円、収入が8万円と仮定した場合、差し引いた6万円が生活保護費です。収入は働いた給料以外にも、年金や資産(家・車)の売却金、各種保険金も収入としてみなされます。
生活保護を受けるための原則を含めた条件は個別によって変わってきますので、ご自分の生活状況などを役所に詳らかに説明することで具体的な内容が分かると思います。
生活保護の加算手当と支払免除
生活保護支給額は住んでいる地域や世帯人数などにより変わってきます。東京や沖縄では生活するための必要な生活資金は変わってきます。物価や家賃を比較すれば都会の方が高いのでその分支給額も上がることになります。それらの条件を勘案した上でその地域の最低生活費=生活保護支給額となるのです。
最低生活費=生活扶助+住宅扶助
生活扶助・・・食費や光熱費などの生活に必要な費用の保障
住宅扶助・・・住居を確保するために必要な家賃の保障
単身者だと1ヵ月あたり10万円から13万円
家族がいる場合は人数に応じて換算されていきます。他にもご家族の条件によって加算できる手当があります。
児童養育加算 18歳以下の子供がいる場合一人につき
妊産婦加算 妊娠している女性。妊娠期間中から産後まで
母子加算 18歳以下の子供がいる場合上乗せされる
障害者加算 身体障害者障害等級1~3級の家族がいる
寒冷地加算 寒冷地居住者に暖房費補助のため
また生活保護支給者は公的資金の支払い免除が適用されます。
- 国民年金保険料
- 国民健康保険料
- 介護保険料
- 介護サービスの利用料金(介護扶助)
- 雇用保険料
- 住民税や所得税、固定資産税などの税金
- 医療費(医療扶助)
- 水道料金の基本料金
- 公営住宅の入居の保証金と共益費
- NHKの受信料
- 公立高校の授業料
- 保育園の保育料
- 粗大ゴミの廃棄料金
- 出産費用(出産扶助)
- 働くために必要な技能の習得にかかる費用(生業扶助)
- 葬儀代(葬祭扶助)など
自治体によってはゴミ袋や公共交通機関の無料券を支給してくれるところもあります。
生活保護は支給だけではなく、様々な支払免除措置がこれだけあるのです。
生活保護を巡る問題点
生活保護と言えばニュースで度々取り上げられている不正受給問題があります。また不正受給ではなかったものの、売れっ子お笑いタレントの母親が生活保護を受け取ったことで問題にされたこともありましたよね。あるいは支給されたばかりのお金ですぐパチンコに出向く様子がテレビで報道されたことで問題になるなど、使い道にも厳しい目を向けられています。なぜならその財源は我々が収めた税金だからであり、社会の目が生活保護受給者に審査が厳しくするべしという声が一時高まったことで、実際に審査が厳しくなっているのは事実です。
生活が困窮して上記に該当する生活保護要件が満たしているにもかかわらず、自治体の窓口では他の方法を助言されたりとなかなか首をタテに振らないこともあるとか、申請を厳しくしたり、支給を停止されたりした結果、衰弱死や自殺に追い込まれたニュースも目にすることがあります。こうした申請の厳格化が不幸を招くことになるのです。逆に申請が通ったことで救われた命もあるように、この審査基準は申請者しやすく、分かりやすくものになってほしいです。不正受給は後で刑事事件で取り締まってもらえば良いのだから。
今の困窮した社会情勢では生活保護申請件数も増えてくることが予想されます。国民の生活を守る最後のセーフティネットとして円滑に機能してもらいたいものです。不正受給が横行したときに生活保護受給者に対して悪いイメージを抱いている人もいるでしょうが、生活困窮者への幇助機能として少しでも救われる命を救ってほしいと願っています。あなたも私も、将来生活保護に頼らなければならないかも知れないのだから。