新型コロナの影響により私たちは自制・自粛を余儀なくされる生活を強いられることになりました。いまだ収束の見通しも立たず、経済への悪影響を来しています。日本経済全体を見ると国内総生産(GDP)が前年比マイナス4.6%という衝撃的な数字が発表されています。
【速報 JUST IN 】昨年度のGDP -4.6% リーマンショック超える最大の下落 #nhk_news https://t.co/s6XxN2dEcT
— NHKニュース (@nhk_news) May 17, 2021
また東京商工リサーチが発表した5月の全国企業倒産件数は、前年同月比50%増の472件でした。リーマンショック級どころかそれを超える非常事態です。改めて新型コロナの影響を思い知らされることになりましたが、そんな状況の中、何と前年度比で約1000%近い業績を叩き出した企業があるのです。
人材派遣会社のパソナが今年5月期の通期連結業績予想を上方修正し、純利益は62億円と、前年の5億9400万円から実に942.3%アップ、約10倍増となる見込みとなりました。
しかしこのパソナの業績について世間からは称賛の声は殆どなく、何故か批判の声が圧倒的です。なぜなのか?どの業界でも現状下で苦戦しているのに1000%もの業績を上げることができたのか?色々と検証していきたいと思います。
人材派遣会社パソナとは!?
創設は1976年で、現在のパソナという社名になったのが2000年です。パソナが就業を斡旋する人材派遣会社であることは大変有名ですが、グループ全体では教育研修をはじめ、地方創生事業や福利厚生の提供、保育、介護、家事代行事業といった様々な事業を展開しています。
人材派遣業は近年の人手不足を背景に需要は増加傾向にあります。このような状況により、企業からの人材確保の採用は活発化しており、市場は堅調な推移しています。人材派遣会社は、企業と求職者のマッチングを収益の柱としていますので、企業の求人数(求人倍率)が増えるほど業績は良くなる傾向にあります。
パソナはこうした人材派遣会社の分野で業界最大手に位置しており、2020年の売上高ランキングを見てもルクルート、パーソルHDに次ぐ業界3位となっています。
そして先述したようにパソナは連結決算で1000%もの純利益を出していますが、詳細は下記の通りです。(パソナ個人投資家より抜粋)
もっとも前年2020年の連結決算は、純利益が前期比69.9%減の5億9400万円で、売上高は前期比0.6%減の3249億円ですから、大きく落ち込んだ後の回復ですが、それでも異次元レベルの上昇です。このご時世に10倍もの業績アップとは凄いですし、この業績アップに世間は大きく注目が集まることになりました。
竹中平蔵の存在と中央政界との密接な繋がり
しかし、新型コロナの影響で、求職者のマッチングを収益の柱とする人材派遣業も企業の求人数(求人倍率)が落ち込んだことで、業績も右肩下がりとなるのは自然の流れなのです。
人材派遣業界の落ち込みと反してパソナは大幅に利益を伸ばしているのですが、その理由は官公庁や企業から業務プロセスの全てを請け負う「BPOサービス」によるものと言われています。この中には政府から巨額で請け負ったコロナ対策関連事業も含まれるとみられます。
例えば昨年の「定額給付金」「持続化給付金」事業では、パソナやその関連会社が受注し、その業務を一手に引き受けています。
そして東京五輪、パソナは東京五輪の大会スポンサーであり、選手村や競技会場などの運営に当たるスタッフの派遣を担う大会運営業務を受託しています。五輪関連はビッグビジネスですので、このタイミングで五輪開催はパソナに大きな利益をもたらしたと言えるでしょう。
しかし、なぜパソナが次から次へとビッグビジネスを受注できるのか?ということですが、その背景には取締役会長である竹中平蔵氏の存在抜きには語れません。
竹中氏はパソナの代表という肩書の他、オリックスの社外取締役、東洋大教授、慶應義塾大名誉教授など様々な顔があります。そして政界でも自民党政権の成長戦略のアドバイザーとして未来投資会議、国家戦略特別区域諮問会議において民間議員の肩書も持っています。
政権の政策決定に影響力がある人物ですから、政府や役所に働きかけ、法や制度、政策を意のままに変更させて、自分の会社に利益を得ることも可能な訳です。国から委託業者への選定も不透明で、パソナに恩恵を預かるよう竹中氏の働きかけたと考えるのが自然であると言えるでしょう。
中抜きとピンハネ疑惑
パソナが1000%もの純利益をあげてきた背景には、竹中平蔵氏の存在と国の大きなバックアップがあってこそと言っても過言ではないでしょう。しかし一企業に国が仕事を集中させるという露骨なやり方に反発が高まっていることも事実です。
そして最も問題なのは、あこぎな「中抜き」が横行していると言われているのです。
パソナが設立時から電通などと共に関与した一般社団法人「サービスデザイン推進協議会」が受注しています。まず769億円で受託し、749億円で再委託された電通が子会社5社に流し、さらにパソナやトランスコスモスなどに計417億円で外注します。とりわけパソナの受注費は約170億円と中抜き度合いが際立って多いのです。
中抜きだけではなく“ピンハネ”疑惑もあります。パソナの五輪有償スタッフの募集要項によると、時給は1650円、日当にすると約1万2000円程度となります。ところが、組織委と委託先の広告代理店との契約書や内訳書には人件費の1日単価は35万円、管理費・経費を含めると日当45万円だそうです。 ピンハネ率は97%。独占委託で利益が転がり込めば、儲かるのも納得です。
ということで1000%の純利益の要因は国の業務を事実上独り占めできたこと、中抜き、ピンハネがもたらしたと言えるでしょう。しかしこのままでは不公平感だけでなく、企業運営そのものにも懐疑的な目が向けられることになります。竹中氏は外国人技能実習制度や水道民営化に絡んでいるとも言われておりネット等でその悪評が広まっていることから、こうした人物が代表を務める会社としての信用やイメージを始め、あらゆるものがダメージを受けることになります。正規ルートで10倍の純利益ならば素晴らしいビジネスモデルとして称賛されたのでしょうが、こういうカラクリでは残念としか言いようがありません。