長年、騎手として第一戦で活躍してきた福永祐一騎手が引退しました。父親は「天才」と称された福永洋一元騎手で、数々の大レースで勝利を収め1970年から78年までリーディングジョッキーに輝くこと9回9年連続という日本を代表する名ジョッキーとして名を知らしめた存在でしたが1979(昭和54)年、30歳の時に落馬事故による損傷が元で障害を負い、以降介護を受けなければならない人生を送ることになります。
その福永洋一と同じ騎手としての道を歩んだ福永祐一は1996年のデビュー後、順調に勝利を重ねます。父子鷹として比較される武豊がデビュー翌年にG1初勝利し、3年目にはG14勝を勝ち全国リーディングジョッキーに輝いた活躍を比べて、福永はデビュー4年目の1999(平成11)年桜花賞のプリモディーネでようやくG1の栄冠を手にすることになります。しかしその直後に父と同じく落馬事故で左腎臓摘出という騎手どころか生命を危ぶまれる大怪我を負ってしまいました。
幸い大事には至らず、復帰してからは順調に勝利を重ねて、G145勝、重賞199勝の輝かしい戦績を残した福永騎手、今度は調教師として競走馬の育成に尽力を注ぐことになります。今後は調教師としての福永祐一の活躍に期待したいと思います。。
阪神競馬場で最終レース終了後に
— Yuuki Hiyorigawa【⋈】@3/19阪神大賞典(阪神競馬場) (@yuuki_admiral) March 4, 2023
福永祐一元騎手の引退式が行われた。
何と福永祐一元騎手の両親・・・そう、
福永洋一元騎手も来場されていた!!
まさかこんな形で洋一さんにお目にかかれるとは。
いや、内心期待はしとったけどホントに😭😭😭
笑いが起きたりしんみりしたりで
全然飽きんかった😆 pic.twitter.com/QMVeF7iwos
そして1980年代~90年代にタマモクロス、オグリキャップ、ナリタブライアンの主戦騎手として活躍した南井克巳調教師が福永祐一騎手と入れ替わる形で調教師を引退しました。好きな騎手でしたので、騎手引退の時は残念な思いでしたが、調教師も引退とは、時の流れを感じますね・・・両者とも思い入れのある騎手でした。南生調教師におかれては第二の人生楽しんでいただきたいものです。
騎手28年、調教師24年
— 競馬ブックネットSHOP (@keibabookshop) February 26, 2023
笑いあり涙ありの人生
おつかれさまでした#南井克巳 調教師#競馬 #keiba pic.twitter.com/ueBjv0MV3o
今回はJRAという組織に携わる人たちの収入などの待遇面などについて紹介していきたいと思います。先述で取り上げた福永騎手も南井調教師もかつてはテレビや新聞で華々しく取り上げられた騎手でしたが、裏方である調教師や職員といった裏方の存在無くしてJRA中央競馬はあり得ません。JRAに携わる人たちのお給料や待遇などどのようになっているのでしょうか?
学生に人気、就職倍率の高い超優良企業JRA
明治時代に発足した政府公認の国営競馬がJRAの前身で、1936(昭和11)年の日本競馬会に引き継がれますが、GHQに独占禁止法の指摘を受け解散、そしてまた引き継がれる形でJRA(日本中央競馬会)が1954(昭和29)年に発足しました。
JRA発足以降、現在の組織体制が一新されます。競争レースのグレード制導入、場外馬券場の設置、レース場の拡張整備など、近代競馬としての礎を築いていきます。その効果があってレース場や場外馬券場の売上と観客動員は年々増えていくことになります。
JRA売上高推移
ピークは1990年代中盤で、この頃は奇跡の復活トウカイテイオー、三冠馬ナリタブライアン、牝馬の天皇賞馬エアグルーヴと魅了した人気競走馬をたくさん輩出しました。この最盛期に売上4兆円を記録しており国内公営競技として申し分ない業績です。このピーク時から一時売上が2兆2200億円台まで落ち込みましたが、現在は3兆円台付近まで回復しており、根強い競馬人気に支えられています。
JRAは学生の就職人気企業としても評価が高いです。JRAは、競馬法と日本中央競馬会法によって設立された特殊法人であり、農林水産省が監督官庁となっています。身分はみなし公務員と言われることがあり、業績の高い安定した企業です。特殊法人でありながら、国からの財政支出を一切受けず、独立採算で運営されているので、公務員らしい給料ではないと言えます。
JRA常勤職員の数は1,484人で平均年収は877.3万円です。(平成29年度)
配属先は事務職、技術職、獣医職とあり、新卒採用人数は、毎年40名程度となっています。倍率はリクナビ調べで約42倍となかなかの人気企業ですね。
騎手と調教師の身分は?
就職により採用された職員は競走馬・騎手・調教師の裏方として支えていくことになります。では花形である騎手や調教師の身分はどのようになっているのでしょうか?
騎手と調教師は、JRAとの登録制をとっており、職員ではありません。JRAの免許試験に合格し、騎手免許を与えられてはじめてレースに騎乗することができます。調教師も同様で、調教師免許がないとトレセンに厩舎を開くことはできません。
そして馬主は、JRAに登録するという形になっています。試験はありませんが、誰でも登録できるというわけではなく、資産等の要件を満たしている必要があります。
報酬はレースによる賞金が主で、勝利を挙げればあげるほど報酬が増えていきます。騎乗した競走馬がレースで賞金を獲得したときに「馬主から支払われる成功報酬のようなお金」これを進上金と言いますが、進上金は馬主に渡す80%から差し引いた賞金の20%で、JRAではこれを調教師10%・騎手5%(障害競走は7%)・厩務(きゅうむ)員5%の割合で分割します。
ちなみに、2022年度東京優駿(日本ダービー、GI)の1着賞金は2億円です。このレースで1着になると、騎手には1000万円、調教師には2000万円の進上金が支払われます。騎手の平均年収は3000万円で、トップジョッキーになると数億円の年収が得られるという仕組みになるのです。
ちなみに競走に騎乗した騎手は、騎乗1回当たり1万6000円の騎手奨励手当も受け取れます。レースの大小や結果でも金額は変動しません。つまり騎乗することである程度の報酬を受け取ることができます。
厩舎所属とフリーの違い
JRAとの登録制度を結んでいる騎手・調教師の報酬の仕組みはご理解いただけだかと思います。高収入が期待できる騎手ですが、落馬等によるケガのリスクが伴うこともあります。落馬によって騎手生命が絶たれる事例もありますが、先述したように騎手はJRAとは登録制となっており個人事業主扱いです。そのため年金や社会保険も国民年金と国民健康保険、つまり自分で支払わなければなりません。それは調教師も同様です。
しかし騎手・調教師の多くは所属厩舎に属しており、厩舎に所属することで安定した収入を得ることができます。年金や社会保険も厩舎名義で加入することもあります。しかし厩舎所属の騎手は厩舎の雑用などの仕事も任せられ、その分拘束時間も取られることになります。ただし厩務員と同じような仕事をこなすので、獲得賞金プラス厩務員の報酬(平均年収800万円)が得られます。
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対してフリー騎手は厩舎の分け隔てなく有力馬に騎乗することができるので、稼ぐという観点ならば断然こちらの方が良いです。現在トップジョッキーと呼ばれる騎手はフリーになることが多く、自分の都合に合わせて騎乗できるのも魅力です。厩舎所属ジョッキーはフリーの騎手よりも収入が少なくなる傾向にあります。
一方、調教師は厩舎に所属することが前提です。というか厩舎を経営しているのが調教師なのです。調教師は元騎手が圧倒的に多いのですが、厩舎所属の馬の管理を一手に請け負うことになり、経営事業能力が問われることになります。JRA調教師の平均年収は1200万円、当然ながら所属している競走馬や騎手の実績によって差が生じます。
トップジョッキーだった人が調教師に転身すると基本収入は下がりますが、落馬等での事故のリスクはなくなりますし、競走馬を育成して優秀な競走馬を輩出する、その過程を一手に請け負うのでやりがいを感じる職業ではないでしょうか?
ということでJRA(中央競馬)に携わる人たちの収入などの待遇面について書き綴って参りました。騎手・調教師・馬主・職員と色んな役割がありますが、いずれも中央競馬を運営する上で欠かせない存在です。今後とも魅力ある中央競馬として貢献していただきたいと思います。
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