手紙を送る場合に切手を貼ってポストや郵便局の窓口に投函すると国内ならば早ければ翌日、遅くとも3日ほどで届きます。僅か84円の切手代で全国津々浦々届けてくれる郵便ネットワークが確立していますから便利でありがたいものです。
ところが郵便事業システムが確立する前の江戸時代は人が走って届けていたのです。いくら乗り物が無い時代とはいえ、人が走って全国津々浦々の世帯に手紙を届けるなんて想像できません。飛脚と呼ばれる郵送手段の仕組みとは?また料金は?色々興味と興味深い飛脚について検証してみたいと思います。
昼も夜も関係なく走り続けていた飛脚
飛脚は輸送手段の無かった時代に手紙・金銭、小荷物などを人が走って送達していました。江戸時代になると送達の間に中継地点を設ける制度が確立されることになり、例えば東京から大阪に送達する場合に、川崎、横浜、静岡、浜松、名古屋、京都といったところに中継地点を設け、それぞれの飛脚が送達をリレー中継します。
正確には一人の飛脚が受持つ距離は10キロほどになりますので中継地点はかなり細分化されており、東京―大阪間は東海道57か所の宿場で継ぎました。10キロだと飛脚一人にかかる負担は軽くなりますし、その分早く走ることができますので、これにより送達にかかる時間が各段に早くなりました。スポーツ競技の駅伝はこの江戸時代に確立された飛脚制度をヒントにして誕生したのです。
飛脚に関しては色々と伝説があり、その鍛え抜かれた脚力は超人的で、現代の長距離アスリートも及ばないほどのスピードとスタミナをあわせもっていたという逸話です。実際に専門家が調べたところ飛脚の平均時速は10キロ前後で、現代のマラソン選手の時速が20キロですから、決して飛脚が超人的な脚力ではなかったということです。
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しかし当時はアスファルトの舗装道路はなく、でこぼこの峠道を草鞋(わらじ)で走っていたのです。夜中は街灯もなく、獣に襲われるリスクだってあります。足場の悪いでこぼこ道を10キロのスピードで走るなど条件を鑑みれば飛脚の肉体能力や精神力は相当凄いものであると言えるでしょう。
江戸―大坂間で3日で140万円
この飛脚を使って東京―大阪に郵便を送ると最短で3日で到着したそうです。人の足だけで570kmの距離を3日程で送達するとはかなり早いと思いますが、気になるのが料金です。飛脚が10キロごとにリレー中継するので人件費も相当掛かると思いますが・・・
この3日到着プランが飛脚の最短コースとのことで料金は銀700匁(もんめ)今の値段に換算すると何と140万円です。驚きの検証結果ですが、一般庶民では当然利用することはありません。
ここで一つ注釈を、匁(もんめ)は尺貫法の単位の一つで、貨幣の重さを示したものです。江戸時代は金銀の量目の単位として利用されていました。日本固有の、かつ日本独特の民間の質量単位の呼称です。
利用するのは時の政権を担っていた江戸幕府、藩の殿様お大名さま、大富豪の商人といったお金持ちに限定されます。多くの人員を要することを考えれば、140万円は驚きですね。
庶民から殿様までプランに合わせた飛脚料金
こちらの動画で細かな飛脚の料金設定が紹介されています。
140万円はいわばプラチナプランな訳ですが、飛脚料金は幅広い料金設定があり一番安い並便はわずか30文(600円)、江戸―大坂間を10日間かけて届けます。それも出発がいつになるのか分からないというもので、ある程度手紙が集まったところでまとめて送達するから安くなるのでしょう。出発日が設定されているものは日数同じで料金は倍の60文(1,200円)になります。料金プランはこの郵送日数に応じて時間が短くなればなるほど価格が高くなります。
こうして考えると交通網通信手段が発達した現代は安い料金で手紙や荷物を輸送できますから本当に恵まれているなと感じます。ところが現代は物流が便利になり過ぎて、物流会社間での競争が激しくなり、それが価格に上乗せしにくい状況になっています。その点を踏まえれば労働に対する対価は江戸時代の方が正当であったと言えるでしょうね。
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