女性が憧れる職業というのを男目線から想像すると、人目に晒される環境で華やかさがある職場、制服がかわいい、そして給料が高いといった条件だと思われます。スチュワーデスとかその条件すべて当てはまるのではないでしょうか。皆さん容姿端麗だし制服も素敵だし、殆どの女性であれば夢見る憧れの職業だと思われます。では飛行機がなかったちょっと世代が古い頃の時代の女性憧れの職業で思い浮かぶのがこの職業ではないでしょうか。

 

 

今でこそデパートは大型ショッピングモールが台頭してからは影が薄くなりましたが、かつてのデパートは花形産業で、学生の就職先人気No.1であることからデパート社員になることは一種のステータスと言われていました。とりわけ女性職員であるデパートガール(略してデパガ)は華やかな制服姿で販売業の矢面に立ち、徹底して教育された接客対応で接してくれるので非常に評判の良い職業です。

 

 

ここでエピソードを一つ、接客対応の素晴らしいデパートガールに感心した実業家から交際を申し出たり、我が息子の嫁にとデパートを通じて見合いを持ちかけたという話がいくつかあったそうです。玉の輿に乗れるかも?女子のなりたい職業として常に上位であるのも頷けますね。

 

 

ということで今回はデパートを彩る華、デパートガールを取り上げたいと思います。大正期から平成初期まではデパートの全盛期と言われており、女性の職場ともいえるデパートガールのお仕事について検証していきたいと思います。

 

呉服商から大衆娯楽市場となったデパート

 

 

デパートは百貨店とも呼ばれていますが、大型の建物内でジャンルごとに売り場を設けて販売する大規模な小売り店のことを言います。対して大型の建物内にテナント業者を募り売り場を貸与しているのが複合商業施設のショッピングモールです。しかし最近ではデパート内にテナント業者を参入させたり、デパート業者がショップモールに店舗を構えるケースもあるので、明確な棲み分けがなくなりつつあるようです。

 

 

老舗と呼ばれるデパートの創業は江戸時代にまでさかのぼるものが多く、当時は呉服商として開店したものが次第に取扱商品が増えていき、明治後期から大正時代にかけて現在のデパートの形態が完成しました。木造平屋建てだったものが鉄筋ビルに建て替えて階層を高くして売り場を広げていき、屋上には子供が遊べる遊園地と最上階には大食堂を設置。まだ娯楽の少なかった大正から昭和初期においてデパートは大衆娯楽市場として人気を博すことになりました。

 

1927(昭和2)年の日本橋三越デパート

 

当時続々とデパートが創業されましたが、その外観は古代西洋風のルネサンス建築物が採り入れられることが多く、その美しく華やかな外観は、周囲の建物と比べても群を抜いて目立っており、集客力を十分に発揮したものです。

 

1929(昭和4)年の大丸心斎橋店(大阪)の建物内

 

外観だけではなく内装も工夫を凝らした古代西洋風アンティークを採り入れており、贅沢感を味わいながらお買い物を楽しめるデパートは大衆娯楽市場として庶民の心を掴んでいたのでしょうね。

 

 

デパートガールの業務

 

 

大正期になり拡大するデパート市場、それに伴い従業員も大量に雇用します。特に力を入れたのが女性従業員の採用です。女性の社会進出が目覚ましくなってきた時代、売り場やインフォメーション案内など接客業務に女性従業員が登場します。

 

インフォメーション・ガール

デパートのどの部署よりも華やかな制服を身に着け、容姿端麗でデパートの顔とも言える受付嬢。入社数年までの若手女性が担うデパート職の華とも言える特別な存在です。業務は正面玄関から入ってすぐにある受付コーナーでの受付業務のほか、管内全フロアに流れるインフォメーション案内、お客様の道案内や付き添い、遺失物管理、パンフレット補充、クレーム対応と多岐に渡ります。覚えることも多く見た目の華やかさと裏腹に結構地味な役割を担う業務と言えます。

 

 

ショップ・ガール

女性店員がデパートに 採用されはじめた 1900 年代初頭には、男性店員と女性店員 では技能に差があったことから 、 知識力が必要とされる接客業は当初男性店員が中心で、女性店員はそれほど難しい知識を必要としない職務に配属されました。その後、女性店員が販売業務に携わるようになることで、男性店員にはない女性店員特有の丁寧な対応が評価されたことで、多くの販売業務は女性店員に取って代わることになります。販売業務の中で宝飾品や化粧品、婦人服といった女性用の製品を扱う業務は人気が高く、特に美容部員(ビューティー・アドバイザー)というコスメブランドを扱う販売員はショップガール一の人気業務でした。

 

 

大食堂ウェイトレス

デパートの最上階にある座席数500から1000ある大食堂。天井が高く広々とした開放的な空間に大窓から街並を展望できるテーブルでちょっと豪華なランチをする。ちょっとした贅沢気分を味わえる空間でした。当時まだ珍しかったオムレツやハンバーグ、スパゲティー、ライスカレー、ビフテキといった洋食類とお寿司、天ぷら、お蕎麦の和食もあります。お子様向けのチョコレートパフェ、アイスの乗ったクリームソーダ、そしてデパートの大食堂が発祥の地となったご飯に旗を立てたお子様ランチは、上野松坂屋が1931年に提供したのが始まりです。テーブルに食事を運んでくれるのは美しいウェイトレスさん。まだ珍しいメイド服が好評で食事と共に、ウェイトレスさんとのささやかな会話が楽しみでした。

 

エレベーター・ガール

1929年に、日本で初めてエレベーターガールを採用したのが松坂屋上野店でした。その前に松坂屋では男性がエレベーターを運転していたのですが、当時のエレベーターは手動式で止め方も難しく、扉の開閉も手動で行わなければならず操作が複雑でした。1929年に今の本館部分が完成した際に「水平停止開閉式」という最新のエレベーターが導入され、操作しやすくなったことでエレベーターガールが初めて登場したのですが、当時は「昇降機ガール」と呼んでいました。

 

 

マネキン・ガール

マネキンガールは戦前・戦後に見られたデパート専属のファッションモデルです。デパートの売り場に立って、売り物の衣装で着飾って販売と宣伝を兼ねる業務で、マネキンガール目当てに多くのお客さんが詰めかけるほどでした。デパート単体で雇われたマネキンガールとは別にデパートを渡り歩くフリーのマネキンガールもおり、スケジュールが一年先まで埋まるくらいテレビタレント並みの忙しさだったそうです。そのため報酬もデパートガールの中では突出して高く、大卒の一流会社役員くらいはあったそうです。

 

 

デパートガールと言っても役割がたくさんありましたが、マネキンガールは現在はさすがに姿を見なくなりましたが、エレベーターガールも見かけなくなって久しくなりました。大食堂も閉鎖しているところもあります。昔は本当に役割が多岐に渡っていたのですね。

 

 

デパート閉店時代を迎え今後どうなる!?

 

 

デパートガールは男性より女性の採用が多くなる傾向でした。その比率は男2:女10くらいと言われています。愛嬌のある女性店員の方が接客対応に適しているという理由からなのですが、もう一つ挙げるとすれば女性は結婚すると家庭に入り早期退職者が続出するからです。女性が活躍する職業ですから、大量採用となるのは至極当然だったと言えるでしょう。

 

 

ではここで気になるデパートガールの給料です。昭和初期の彼女たちの月給ですが、高等小学校卒だと25円位、高等女学校卒だとおよそ30円位といったところです。先述したマネキンガールは例外的な高収入ですが参考までに、昭和5年の大卒初任給は70円くらいですから大卒男子の半分以下の月給だったわけです。

 

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休日は、デパートの公休は月3回。プラス特休が1日で、合計月4日の休みでした。週休二日制が定着した現在と比べるとかなり少なかったことがわかります。

 

 

待遇面では決して恵まれた方ではありませんが、花嫁修業と年頃の男性との出会いが比較的多いデパート勤務は、女性の幸せを掴む上で恵まれた職場であったと言えるでしょう。しかしデパートガールの現状はデパートから正規に採用された社員はごく限られており、派遣やアルバイトが大半を占めるようになりました。またデパート内の店舗も別会社のテナントが入る形で直接雇用されていない外部委託の形態が多くなっている状況です。直接雇用されるデパートガールは年々減少傾向にあります。

 

 

時代の移り変わりで、悪い意味で様変わりしている状況です。ショッピングモールに圧され閉館に追い込まれるデパートもちらほら出てくるようになり、斜陽産業化していることは否めません。かつて家族連れで休日にお出かけすることが楽しみだったデパートが産業自体が衰退しつつあるのは寂しいものです。100年以上の歴史あるデパート文化が再び活況となってくれることを願ってやみません。

 

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投稿者

yuuponshow

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