今春は全国一斉に統一地方選挙が行われます。統一地方選挙とは「都道府県」「市」「町」「村」での議会選挙です。国政選挙と比べて影が薄い感は否めませんが、情勢によっては国政にも影響を及ぼしかねない重要な選挙ですので、国政政党議員も全国各地で候補者の応援演説に駆け回っており、熱い戦いが繰り広げています。
ところで統一地方選挙において、大きな問題が直面しています。皆さんご存じでしたでしょうか?
とんでもない事態が進行している・・・#統一地方選2023
— ray2020(C) #改憲派全員落選運動 #STOPインボイス (@ray202019) April 4, 2023
統一地方選挙の4割が無投票当選。「議員」が世襲制ビジネスになるのは当然、なり手も有権者の関心もなし=今市太郎 https://t.co/zQtsv9CUys
無投票当選とは、選挙において立候補の届出者数が定数以下となった場合に、投票が行われずに候補者全員が当選することです。国政選挙ではほぼ見かけることはありませんが、地方選挙では上記の割合で示す通り結構あるのです。一体なぜこのような事態に陥るのか?選挙システムに問題があるのでは?ということで今回は地方議会(特に都道府県議会を重点に)の選挙システムについて書いていきたいと思います。
議会議員の報酬と選挙出馬条件
地方議会議員選挙は、先述した通り都道府県または市区町村の議会の全議員を選ぶ選挙です。任期は4年で議員として立候補するには下記の条件が必須となります。
・満25歳以上であること。
・立候補する都道府県または市区町村に、それぞれ3カ月以上住所を持つこと
・供託金を収めること
上記2つの条件は容易いですが、問題は供託金です。
都道府県市町村選挙における供託金
立候補すると決断したは良いが、先立つものはお金です。立候補するために上記の供託金額を選管にすみやかに納めなければなりません。金融機関や知人に頼み込んで供託金を集める人もいるでしょう。そしてようやくお金を集めて収めることができても没収点に届かなければ没収されてしまうのです。国政選挙が一番かかりますが、地方選挙もなかなかの金額です。
しかし当選さえすれば供託金は戻ってくるし、毎月安定した議員報酬が得られることになります。47都道府県の地方議会議員の月額報酬は各自治体によって変わりますが、平均で約82万8000円であり、平均年収は約993万円と、1000万円を少し切る平均値となります。さらに公務員扱いなのでボーナスも貰えますし、政務活動費が加算されるのでトータル1000万プラスαとなります。
市町村単位となると、これはバラつきが大きく、政令指定都市やそうでない都市では報酬に格差が生じます。一番高いのが横浜市で月額95万円となります。一方で人口の少ない市では月額20万台半ばといったところです。町村議員になると月額報酬10万円台も珍しくないのでこれでは生活できないので、兼業する人が殆どだそうです。人口や財政規模で月額報酬に違いが生じるということになります。
成り手不足!?無投票当選が起こる原因
先述したように地方選挙の4割が無投票当選となります。平均で82万円の月額報酬が見込まれる都道府県議会レベルでもそのような事態に陥ります。なぜ4割も無投票に陥ってしまうのか?それは地方選挙の特殊な事情も影響しているようです。
県議会選挙は一都道府県を地域ブロックに分けて、人口規模に応じて議席数が割り振られます。分かりやすく解説するために私の住んでいる鹿児島県で解説したいと思います。
鹿児島市議会議員の定員は41人で今回の立候補者が67人となります。(地図上の青色は今回選挙が行われた地域、白色は無投票当選の地域)これをブロック別に分けて定員の割り振りをします。人口の多い地域ほど定員が多くなりますので、その地域には候補者もたくさん出てくることになります。
一方で、人口の少ない地域(県庁所在地から離れた地域や離島)は定員がご覧のように1とか2人の定員となります。こうした地域は、その地域の有力者で顔が広く、幅を利かせているので他所から参入しても勝算は厳しくなります。
無投票当選地域などその典型で、その地区に強力な実力者がいた場合に、対抗して候補を立てると後々地域から四面楚歌にされる恐れがあります。議員になりたくて全国の無投票になりそうな地域から出馬しようとしても3ヵ月の居住条件もそうですが、よそ者が出るには障害が多すぎるのです。
居住実態と地区ブロック割の制度見直しを
一番問題なのが居住条件も緩和するべきだと考えます。
例えばこういう事例を覚えているでしょうか?
【当選無効…“スーパークレイジー君”が提訴】https://t.co/neFNjnxjoX
— 日テレNEWS (@news24ntv) July 14, 2021
埼玉県戸田市の市議選をめぐり、県の選挙管理委員会から当選無効の判断が示された「スーパークレイジー君」市議が、判断の取り消しを求めて東京高裁に提訴しました。 pic.twitter.com/72AgqjRkUg
ネット界隈では有名人のスーパークレイジー君(本名:西本 誠)が埼玉の戸田市議選に出馬したのが2021年のこと、先述したように地方議会選挙に立候補するには都道府県または市区町村に、それぞれ3カ月以上住所を持つことが必要とされています。スーパークレイジー君は選挙の4ヵ月前に戸田市に住民票を移しており、住民票的には問題ないのですが、問題なのが居住実績なのです。
スーパークレイジー君が住民票を移した先の賃貸アパートが他人名義のままだったり、選管が居住実績を確認する身辺調査が実施された際、居住を確認するには不十分であったことが挙げられました。この問題は訴訟に発展し最高裁まで争われ、結局当選無効で失職となってしまいました。
しかし、これには事情があり、スーパークレイジー君が若い頃警察の厄介になるなどやんちゃしていたこともあり、今に至ってあらゆる契約が自らでできなかったからだそうです。そのため戸田の友人が協力する形で友人の住居に住民票を移すことはできても、あくまで友人宅ですから遠慮もあるし生活実態が十分確認されないという結果になるのはやむを得ません。しかし条件としては微妙なのですよね。本人や関係者の証言から戸田市を拠点に生活していたのは事実だし、この当選無効を訴えた告発者が落選した公明党候補者の関係者だとの噂もあるので、有耶無耶にできたかも知れません。
えびさわ由紀氏が許されるなら、スーパークレイジー君こと西本誠氏も許されるはずだが、西本氏は裁判敗訴、当選無効で失職しています。
— 中村之菊 基地引取党 (@nogitama) June 19, 2022
「東京の東雲に住んでます」維新・海老沢前大阪市議に「居住実態」重大疑惑、再び @gendai_biz https://t.co/sLjqGi3F33 #現代ビジネス
一方、日本維新の会のえびさわ由紀東京都議候補は大阪市議の身分のまま、一ヵ月以上東京都内で政治活動を続け地元を不在にしていたそうです。えびさわ氏は東京都江東区の東雲に家族と共に住んでいると公言しており、大阪は実家があることからそこで居住実態をつくって大阪市議会に出馬当選したようです。所属政党の入れ知恵で東京居住者でありながら大阪の地方選挙に出るよう仕向けたのでしょう。しかし東京で政治活動やりながら、大阪市議会の身分のままとは筋が通りません。地方自治法の「議員の失職及び資格決定」に抵触するので国政に出馬した時点で市議会議員を辞職しておくべきでしたね。
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居住実態について2人の対局なケースをご覧いただきましたが、スーパークレイジー君については同情の余地があると思います。選管に何度も確認して大丈夫だとお墨付きをもらっていたという話も聞いたことがあります。当選した後で無効にされるなんて悔やんでも悔やみきれません。一方で普段東京在住で大阪市議会議員として内偵されることなく活動できていたえびさわ氏のケースがあり、狙い撃ちされたようでどうにも腑に落ちません。
そして地方選挙で無投票当選を無くすための改革案として取り上げたいのが「地区ブロックの撤廃」です。都道府県の全有権者がすべての候補者に投票できるようにすることで無投票はなくなります。地方議会の4割が無投票当選になるなんて、選挙制度の欠陥としか言いようがありません。選挙の空白を無くすためにも全選挙区制にするべきです。そして優秀な候補者が集まりやすくして、有権者の選択肢が増えるよう居住実態の緩和もあわせて着手してもらいたい。これだけ改革すれば地方議会選挙の課題など解消できると思うのですがみなさんいかがお考えでしょうか。
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